命と向き合って生きるということ

カテゴリー:いま・ここ・私

公開日:2017.06.02

 

病院へ行くと父と同じ病気の患者さん、そして患者さんのご家族に会う。

顔を見たらお互いに『私たちは一緒のチーム!頑張りましょね!』そんな言葉を掛け合い励まし合ったりする。父は苦しい極面もあるけれど、そんな温かな空気が流れるところに身を置いているのだろう。

今日、待合場で一人静かに啜り泣いている年老いた女性がいた。彼女の痛い気持ちが突き刺さるように私の胸を打つ。
そっと隣に座り彼女の背中に手を当て撫でた。

オンオンと声をあげ彼女の涙が頬をつたう。お互いに言葉は要らない。血縁関係は関係ない。生きるとはこういうことだ。命と向き合うとはこういうことだ。

健康が当たり前だと思うなよ、私。それがどれほどまでに傲慢なことか。

4年前、自殺を選び孤独に死んでいった母親のことを思い出す。私は母を助けられなかった。どちらかを選ぶ、そんな究極の選択の中で、切り捨てざるを得なくなった4年前。

ただ救いだったのは、彼女がこの世を生きてきた全ての軌跡が私や父や兄、そして彼女の周りにいた人に対する献身的な愛で溢れ返っていたから。そのことがどれだけ私の心を癒やしてくれただろうか。

ただ『恩』でしかなかった。そんな彼女の命日が近づく。
恩渡しネットワークを立ち上げた2月1日が命日。

いつしか私がフェイスブックに書き綴る私の愛のエピソードは、天国にいる母への手紙になった。そして母が亡くなり、一人京都で暮らしていた父への手紙でもあった。そして私の夫へのラブレターでもあった。

私にとってのソーシャルメディアが少し他の人とは毛色が異なるのは、そういう天にも繋がるような大きな空間で、小さな頃から一人夜空を見上げ星に気持ちを通わせていた、そんな独特な空間に私が作り上げていたからかもしれない。

 

陽のあたる場所を求めて生きる

人には陰と陽がある。どちらの部分にも折り合いをつけ、なるべく陽のあたる場所に向かいたいと光を探す。いつしか途上国に目が行くようになり、人の心のあり方に少しでも光を差し込みたいと思うようになった。

職業としては全く興味がなかったが、心理学やコーチングの門をたたく。時を同じくして父が病にかかる。そのうち、インド人パートナーにも私の電話のタイミングが一瞬でも狂えば今そこに死が訪れてもおかしくない暗闇が舞い込む。

思いがけず心理学やコーチングなどが私の強固なツールとなり、私の愛の表現と奏でながら彼らに大きな効果を発揮し続けた。

死を意識した人の暗闇。
それは普通のエネルギーとは違う。跳ね返りも強烈に強い。こちらにも大きな覚悟がいる。死を意識した暗闇をリセットさせ、生きる目的と意味に書き換えていく共同作業。こちらにも相当の覚悟がいる。

頑固な脳の動き・習慣がなければ人が病気や死を選ぶことはない。一つずつ一つずつ、根気よく根気よく、寄り添い励まして、時には叱咤しながらも脳の動き・習慣を彼らが本来望むべき思考へ持っていく。

心技体。全てが面白いように変化していった。

今もその途中。まだまだ試練の場は続く。でもこれだけは間違いない。色んな意味で私は今、彼らを通じ、そして、私を支えて下さる人々の輪を通じ、初心の覚悟、そして私自身をさらに意味あるものへ成長させてもらえているということ。

私もかつて、生と死の境界を経験させて貰えたから痛いほどわかる。

陽のあたる場所。
人はそれを求め、私も陽のあたる場所を求めて、ただ生きているのだから。

投稿者プロフィール

有川 凛
有川 凛
財団法人RINDA foundation JAPAN創設者/代表理事
株式会社らしゅえっと代表取締役
NPO「恩渡しネットワーク」代表

2014年1月より、「生きやすさ」と「循環(持続可能性)」の2つのキーワードを活動ポリシーに、除菌水シリーズ「まましゅっしゅ」の商品企画、制作、販売。2年連続で「キッズデザイン賞」を受賞し注目を集める。

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