生きやすさのための小さな一歩

カテゴリー:いま・ここ・私

公開日:2017.12.03

インドの「まましゅっしゅ工場」は、私のインド人パートナーが所有する「紙おしぼり工場」の一角にあり、紙おしぼり工場で働く人は「まましゅっしゅ工場」の働き手でもある。

先日、インド人パートナーから、この工場で働くとある女性の話を聞いた。

私が初めて彼女に出会ったのは2年前のこと。彼女はこの村の小さな小さな5畳ほどの家に兄妹が8人と両親とお婆ちゃんと住み、弟や妹たちを学校へ通わせるために働いていた。

もともとは別の仕事をしていたが、私のインド人パートナーがこの工場を始めた時に、様々な事情を知り彼女を雇い入れたそうだ。着の身着のままの服。一日一食食べられるかどうか。そんな日々だった彼女。

私がインドで彼女に出会った時、真っ先にパートナーにお願いしたのは、せめて綺麗なユニフォームを作って彼女に着せてあげて欲しいということ。服をあげるとなると失礼だと思うけれど、彼女も私と同じ女性だから。

パートナーは直ぐに聞き入れて、彼女にユニフォームを提供してくれた。それともう一つは社員としてのIDカードの付与。だから今年の2月に訪ねた際に撮った写真では、彼女はユニフォームを着て胸元には自分の写真と名前が入ったIDカードがぶら下がっている(右端の女性)。

 

環境が変われば意識が変わる

この工場での雇用をきっかけに彼女は色々と変わっていく。生活も少しずつ変わっていったが、文字を覚えるようになった。今では少し英語ができる。

そしてこれが、ある出来事へと繋がっていった。

社員で工場の簡単な機械操作をする担当のマンジュの家族の一人が倒れ、どうしてもムンバイへ引っ越さなければならなくなった。マンジュの代わりの社員を探そうかという話をし始めていた時、彼女のことがちらついた。

「彼女は今のパッキングという仕事だけでなく、いつか、もう少しグレードの高い仕事をしたがっていたんだ!」
仕事のグレードが上がるため、給与も今の40%アップになる。

パートナーはそっと彼女に聞いた。
「その仕事を君はやってみるか?」と。

彼女は目頭を熱くし泣き始めたそうだ。
「もちろんです。私はやりたかった。やらせてください」

私はパートナーからこの話を聞きながら涙が溢れた。

『RIN。私たちはこのような小さな一歩からではあるけれど、人を生きやすくしていると思うんだよ。あなたは決して間違っていない。このまま、一歩ずつでも進もう!』

私は今日も遠く日本から、彼女たちのことを思っている。もうすぐそちらへ行きますからね。

投稿者プロフィール

有川 凛
有川 凛
財団法人RINDA foundation JAPAN創設者/代表理事
株式会社らしゅえっと代表取締役
NPO「恩渡しネットワーク」代表

2014年1月より、「生きやすさ」と「循環(持続可能性)」の2つのキーワードを活動ポリシーに、除菌水シリーズ「まましゅっしゅ」の商品企画、制作、販売。2年連続で「キッズデザイン賞」を受賞し注目を集める。

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