心に残る。そんな物語、貴方にもありませんか??

カテゴリー:あの頃の私(2001~2005年)

公開日:2004.03.16

2004年3月16日

『蘇れ あの頃のきもち』
~きょゆーんわんわん きょゆーんわんわん~

私には、とても不思議な記憶があります。
なぜだかわからないんだけど、小学生の頃の、そしてしかも低学年の頃の、
不思議な記憶が、『鮮明に』残っています。

記憶力が凄いというのか、小さいながらにもとても感銘を受けたから何なのか、
私は、小学2年生の国語の教科書の一番最初に載っていた物語を、
教科書で言うと、最初の2ページくらいまでですが、
一字一句間違わずに、おぼえているのです。(笑)

強制的に暗記させられたわけでもないのに、なぜか覚えているんです。
ふしぎです。。

それが これです。

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『ろくべえ まってろよ』
 

灰谷健次郎

~きょゆーんわんわん きょゆーんわんわん~
ろくべえが あなにおちているのを さいしょにみつけたのは えいじくんです。

「まぬけ」っとかんちゃんがいいました。

いぬのくせにあなにおちるなんて じっさい まぬけです。

あなはふかくて まっくらです。

なきごえで ろくべえということはわかりますが、すがたはみえません。

みつおくんが うちからかいちゅうでんとうを もってきました。

・・・(省略)
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このことを友達に言い、冒頭だけですが、物語を話すと、目を丸めて
「え~??」と驚かれます。

そりゃそうでしょう。
だって、どう考えたって変ですもの。(笑)
小学2年生の時の、国語の教科書ですよ!(笑)

しかもその友達達は 口々に言うんです。
「第一、小学校の時の記憶も薄いし、国語の教科書なんて、おぼえてないぞ!!
何を習ったっけ??」って。(笑)

でもね、実は私、この『ろくべえ まってろよ』だけじゃないんです。
暗記させられたわけでも何でもないのに、おぼえているのって。(笑)

こんなことはともかくとして、ではなぜ、今、この話を持ち出したかというと、
実は最近、こんなエピソードがあったからなんですよ。

(エピソード)
3月に入ったある日、ある友人から
「バレンタインのお返しに、何が欲しい?」
と聞かれました。

私は、少し考えてから、
「灰谷健次郎の『ろくべえ まってろよ』という本が欲しい!
見つけてきて!!」
っと返事しました(笑)。

その友人には、以前、わたしのそのおかしな記憶の話を話したことがあったんです。

その時、その友人は、
「へ~ぇ。。Rinちゃんは、ほんとすごいな~。おもしろいな~ぁ。」と
目を丸くしていたのをおぼえています。

それと同時に、私のことを「この子はとにかくおもしろい!」と
とても興味深く思ってくれていたと思います(笑)

・・そうですよね?(笑)。え、あなたですよ。あなた!。。(笑)

そしてそして、たまたまホワイトデーの日に、その友人にあったのですけど、
その時、おリボン付きの『ろくべえ まってろよ』を
にっこり笑って手渡してくれました。

開けると、それは、「必読図書」シールの貼られた『絵本』でした。

どうしてその友人が単行本ではなく、絵本を選んだのか、聞かなくてもわかったけれど
なんとなく聞きたくて、

「単行本もあったと思うけれど、どうして絵本なの?」

っと聞きました。

すると、その人は、「絵がかわいかったから」と
にっこり笑って答えてくれました。

そのことも、わたしはとても嬉しかったです。

そして、その絵本をそっと読んでみると、それは、
私が、小学2年生の時に読んだ、そのまんまの『ろくべえ』でした。

・・・ろくべえが 私を待っていた気がしました。

どんどん読んでいきました。

そして驚かされたことがあります。

それは、なんとなんと「一字一句間違えていない」という
私の記憶です。

不思議でした。

絵本なので、そこには、色んな絵が描かれています。
私の記憶を辿ってみると、確かに教科書にも、その絵が、
そのまま描かれていた気がします。

私は、その絵本を読んでいくうちに、なぜ、私がこの物語を覚えているのかが
よくよくわかった気がしました。

子供の目線にたって、物語が描かれている。
だけれど、そこには、こどもの目を通しての人間の心が、
そして社会が、きっちりと、子供のように純粋に描かれているからです。

そこには、優しさがありました。

そして、その優しさに、当時私は、こころを打ったのでしょうね。

読んでいて、胸が熱くなりました。

そして、あの当時の、あの純粋な気持ちを、思い出した気がしました。

「また、ここで出会ってしまったな」と思いました。(笑)

それではそれでは!!

ここで、わたしの愛する『ろくべえちゃん』を みなさんに ご紹介したいと思います。
しばし、ご清聴ください。

『ろくべえ まってろよ』

灰谷健次郎

きょゆーんわんわん きょゆーんわんわん
ろくべえが、あなにおちているのを
さいしょにみつけたのは えいじくんです。

「まぬけ。」
と、かんちゃんがいいました。

いぬのくせにあなにおちるなんて
じっさい まぬけです。

あなは、ふかくて まっくらです。

なきごえで ろくべえということは
わかりますが、すがたは、みえません。

みつおくんが うちからかいちゅうでんとうを もってきました。

てらすと、うえをむいて ないている ろくべえが みえました。

「ろくべえ。がんばれ。」

えいじくんが、おおきなこえで さけびました。

「わんわん。」

うれしいのか、ろくべえのなきごえは、まえより おおきくなりました。

「ろくべえ。がんばれ。」

みんな、くちぐちに いいました。

しかし、がんばれと さけぶだけでは どうにもなりません。

だいいち、ろくべえは なにをがんばったら、いいのでしょう。

だれかが ロープをつけて、したにおりていけばいいのでしょうが、
それは いちねんせいに むりです。

こうがくねんのこは、まだ、がっこうです。

きょうは、にちようびでないので、
おとうさんは いません。

こまった。
こまった。

みんなでそうだんをして、おかあさんをひっぱってきました。

のぞきこんで、おかあさんたちは、わいわいがやがや いいました。

「むりよ。」

と、しろうくんの おかあさんは いいました。

「そうだわ。おとこでなくちゃ。」

と、かんちゃんの おかあさんも いいました。

「けち。」
と、かんちゃんは、くちごたえをしました。

「ぼくが おりていく。」
かんちゃんは、おとこらしく いいました。

「ゆるしません。そんなこと。」
かんちゃんの おかあさんは、こわいかおをして いいました。

「ふかいあなのそこには、ガスがたまっていて、それをすうと、
しぬことだって あるんですよ。」

みんな、かおを みあわせました。

どうしよう。
はやく たすけてやらないと、ろくべえが しんでしまう。

おかあさんたちは、やっぱり わいわいがやがやいいながら、
かえってしまいました。

「けち。」
と、かんちゃんが いいました。

「けち。」
えいじくんも いいました。

ろくべえが、まるくなってしまったので、みんな、
しんぱいになってきました。

「ろくべえ。」

よびかけても、ろくべえは ちょっと めをあげるだけです。

「ろくべえ。げんきだしぃ。」

えいじくんは そういって、『ドングリコロコロ』のうたを
うたいました。

「もっと、けいきのええうたを うたわな あかん。」

かんちゃんは、おとなのよなことを いって、
『おもちゃのチャチャチャ』をうたいだしました。

みんなもうたいました。

とくべえは、やっぱり ちょっと めをあげただけです。

「ろくべえは、しゃぼんだまが すきでしょ。
しゃぼんだまを、ふいてあげたら、げんきが でるかも・・・・・」
みすずちゃんが、やさしい こえで いいました。

ろくべえは、しゃぼんだまをみると、たべものとまちがえるのか
すぐ、とびつきます。

みすずちゃんは、それを おもいだしたのです。

みんな、うちへ とんでかえりました。

ストローと、せっけんすいを、もってきました。

それから、きょうそうのようにして、しゃぼんだまを ふきました。

だけど、ろくべえは、ぴくりとも うごきません。

どうしよう。
どうしよう。

みんな、はんぶん なきそうなかおを しています。

そこへ、ゴルフのクラブをふりながら、
ひまそうな ひとが とおりかかりました。

かんちゃんは、ろくべえを たすけてくれるように、たのみました。

「どれどれ。」

そのひとは、あなをのぞきこんでから、いいました。

「いぬで よかったなぁ。にんげんやったら、えらい、こっちゃ。」

たすけてくれるのかとおもったのに、そのひとは そう いっただけで、
いってしまいました。

もう、だれも あてにできません。

みんな、くちを きゅっとむすんで、
あたまが いたくなるほど、かんがえました。

「そや。」

とつぜん、かんちゃんが おおごえを だしました。

「みすずちゃんとこの クッキーを、かごのなかに いれて
おろしたら・・・・・」

なるほどと、みんな おもいました。

クッキーは、ろくべえの こいびとです。

ろくべえは、よろこんで かごにのることでしょう。
そこを、つりあげるという わけです。

めいあん。
めいあん。

「クッキーを つれてくる。」

みすずちゃんは、いいました。

えいじくんや みつおくんたちは、かごと ロープをとりに
かえりました。

いちねんせいですから、かごと ロープをむすびのに、
とても じかんがかかりました。

でも、やっと できました。

クッキーを かごのなかに いれました。

そろり、そろり。
そろり、そろり。

そろり、そろり。
そろり、そろり。

ぐらっ。

「あっ。」

もうすこしで おちそうでした。

あぶない。
あぶない。

やっと、つきました。

「あれぇ。」

みすずちゃんは、とんきょうな こえをあげました。

だって、クッキーは かごから、ぴょいととびでて、
ろくべえと じゃれあってなんか いるんですもの。

「まぬけ。」
と、かんちゃんが どなりました。

「ちえっ。」
と、しろうくんも、したうちを しました。

どうしよう。

にひきとも、かえれません。

「あれぇ。」
また、みすずちゃんが こえを だしました。

クッキーが、また、かごのなかに、はいったのです。

クッキーを おいかけていた ろくべえも、
ぴょんと とびのりました。

しめた。
そら。いまだ。
「わあっ。」

みんな、おおよろこびで、ロープを ひきました。

 

心に残る。そんな物語、貴方にもありませんか??

投稿者プロフィール

有川 凛
有川 凛
財団法人RINDA foundation JAPAN創設者/代表理事
株式会社らしゅえっと代表取締役
NPO「恩渡しネットワーク」代表

2014年1月より、「生きやすさ」と「循環(持続可能性)」の2つのキーワードを活動ポリシーに、除菌水シリーズ「まましゅっしゅ」の商品企画、制作、販売。2年連続で「キッズデザイン賞」を受賞し注目を集める。

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